グレース家庭医療クリニック

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家庭医療とは

家庭医療とは

当クリニックが行います「家庭医療」についてご説明させて頂きます。

家庭医療って何?

「家庭医療:Family Medicine」という用語は欧米では古くから親しまれてきましたが、日本ではあまり聞きなれない言葉だと思います。

私たちは、日本で医師に出会うと、「お医者さんなのですね。。。では何科の専門なのですか?」と最初に質問します。しかしながら、欧米や海外では最初に「Generalist(総合診療医)なのですか? それともSpecialist(専門医)なのですか?」と尋ねます。そこで「専門医(Specialist)です。」と答えると、初めて「では、何科の専門なのですか?」となります。一方、「総合診療医(Generalist)です。」と答えると、それは普通、家庭医(Family Doctor)を意味します。

家庭医療(Family Medicine)を詳しく説明する前に、まず「プライマリ・ケア(総合的に診る医療:Primary Care)」という用語の意味をご説明させてください。国立国語研究所によりますと、次のように説明されています。
「大きな病院での専門医療に対して、ふだんから何でも診てくれ相談に乗ってくれる身近な医師(主に開業医)による、総合的な医療です。今後の社会的な医療体制を考える上で重要な概念です。」

欧米ではずっと以前からプライマリ・ケア(Primary Care)という用語はごく一般的でした。そして住民はその地域に登録されたプライマリ・ケアに携わる家庭医(Family Doctor:英国ではGeneral Practitioner(GP)といいます)のうちで誰かに登録されます。すなわち登録された家庭医が、あなたが生まれてから生涯に渡ってのかかりつけ医(主治医)ということになります。英国の充実した福祉制度を表す言葉に「Womb to tomb care(ゆりかごから墓場まで)」があります。プライマリ・ケアに携わる家庭医とはまさに、男女を問わず、生まれてから(家庭医の中にはお産の免許を有する方もいます)、新生児、そしてお年寄りまですべての年齢の方々を、頭の先からつま先まで、診療科目を問わず、また身体的のみならず、精神的、(家族背景等も踏まえた)社会的にも、即ち全人的に見渡す「かかりつけ医(主治医)」のことです。家庭医は、あなたが生まれてから、身近な存在として、あなたのライフステージに沿って、何年もお付き合いしながら、その時、その状況にあった医療を、あなたのパートナーとして行なっていきます。

「家庭医」はどのようにして育成するの?

医師による医療行為を外来・往診と入院に分けた場合、「家庭医(Family Doctor)」とは、全科の外来診療のトレーニングを特別に受けた、外来診療を専門分野とする医師(外来診療のスペシャリスト(専門医)です。私自身も医師免許を取得した後、米国流の研修を受けました。即ち、内科なら循環器内科、呼吸器内科、消化器内科など、小児科なら外来、新生児室、NICU(新生児集中治療室)、産婦人科ならお産、外来、病棟と、各診療科で一定期間ずつ、何年にも渡って研修してきました。

欧米では何かあればまず家庭医を受診しますが、残念ながら、日本では「家庭医」を育てる教育の歴史も研修施設も多くありませんでした。しかし最近になって日本中の至るところに多くの研修施設が誕生してきており、私の所属する「日本プライマリケア連合学会」という家庭医たちの学会には、2012年の段階で約5000名のドクターが登録しています。

「こんなときあなたはどうしますか?」

あなたには何でも相談できる、かかりつけ医(家庭医Family Doctor)がいらっしゃるでしょうか?次のような場合、あなたはどうなさいますか?
  • 何科にかかればよいか分からないとき
  • 風邪をひいたとき
  • 高血圧や糖尿病など生活習慣病になったとき
  • インフルエンザなど予防接種を受けたいとき
  • 頭痛と肩こり、腰も痛くて、背中もかゆいとき
  • ぎっくり腰になったとき
  • “じんましん”がでたとき
  • タバコをやめたいと思ったとき
  • 自分がガンじゃないか心配なとき
  • 最近どうも調子が悪く、「更年期障害」ではないかと思うとき
  • 最近、身体がしんどくて何もやる気がでず、夜に目が覚めて眠れない日々が続くとき
  • 包丁で手をザックリと切ってしまったとき
  • 背中の痛みが続いていて、大きな病院を受診した方がよいのかどうか悩むとき
  • おじいちゃんの介護に手がかかるようになり、主治医意見書を書いてほしいとき
  • おばあちゃんが認知症でだんたんと食べられなくなり、寝たきりになって往診が必要なとき
  • 内科と眼科と整形外科、皮膚科、泌尿器科、すべての定期受診が困難になったとき
日常的な健康問題は多種多様で、これらはいずれも日常よくあることだと思いますが、このような場合、あなたならどうしますか?家族に意見を聞いたり、市販薬で様子を見たりするかもしれません。ですが、それでも解決しない場合、医療機関の受診を検討されることでしょう。
こんなとき安心してかかれる医師や医療機関があれば心強いですね。しかも、いろいろな問題を一緒に相談して解決していければ、素晴らしいと思いませんか。そのような際に、真っ先に受診する医療機関は、まさに家庭医のいる診療所(クリニック)です。なぜならここでは、科を問わず、日常的に起こる健康問題の大半については解決することが可能だからです。

家庭医療のメリット

家庭医を主治医にもつ利点を具体的なケースを挙げて示してみましょう。
例1複数の科を受診されている場合
78歳の女性、田中マリさん(仮名)は多くの医療機関を受診されています。

78歳 田中マリさん(仮名)

  • 狭心症(心臓の病気)は3ヶ月毎に循環器センターを受診
  • 血圧と胃腸の薬をもらいに1ヶ月毎に駅前診療所(内科)を受診
  • 腰痛と膝のヒアルロン酸注射に整形外科クリニックを2週間毎に受診
  • 6ヶ月に一度は市内の眼科医院で白内障のチェック
  • ときどき尿の出が悪くなることがあり泌尿器科クリニックも受診
随分と忙しく、大変だと思います。様々な医療機関を受診し、各専門家の治療を受けていらっしゃいますが、このような状況ははたして理想的と言えるのでしょうか?このような方があなたの周りにはいらっしゃらないでしょうか?

例えば、心臓の薬が、持病の十二指腸潰瘍を悪化させることがあります。また、それぞれの症状に対して異なる医師を受診すると、検査が重なってしまったり、治療や薬が重複してしまうこともあります。お薬手帳の活用や医師同士の連携である程度は対処出来ますが、マリさんのように5ヶ所の医療機関を受診している場合は、難しくなってきますね。このような場合は、各専門医と連携した、一人の主治医(家庭医)をもたれることがとても有意義だと私たちは考えています。
例2各個人にあった治療を
いっしょに作り上げていく
(Patient-centered clinical method)
たとえ病名は同じであっても患者さん一人ひとりにあった診療・治療を行なっていく例としては、北海道家庭医療学センターのHPの「患者中心の医療の方法とは?」という項目に記載された内容が非常にわかりやすいと思いますので、その例を引用させて頂きます。
実はAさんは最近仕事が忙しく、いつもイライラしており、そうしたストレスが胃潰瘍に影響したのだろうと感じていました。以前、抗生物質(抗菌薬)で体中に発疹が出たこともあり、除菌治療に乗り気ではありません。それよりも、ストレス解消の良い方法を見つけた方が良いだろうなと思っています。
Bさんは胃潰瘍だった父が1年後に胃がんの診断を受けて亡くなったことを思い出し、本当に胃潰瘍なのかと不安を感じていました。今は治療よりも胃がんがないかをはっきりさせてほしいという気持ちでいっぱいです。仕事にも集中できず、上司からも注意されることが多くて困っています。
胃潰瘍という病気はみぞおちの痛みやもたれを症状とすることが多く、胃カメラで覗いてみると、胃の表面には傷が見られます。その原因には、ストレスや最近ではピロリ菌という菌が関係していることも分かっています(ピロリ菌はさらに胃がんの原因になることも判明しています)。治療法は胃酸分泌を抑制する内服薬、ピロリ菌の除菌などがあります。

AさんとBさんを比較した場合、同じ病名(胃潰瘍)で、胃粘膜の胃カメラの所見(様子)も同じとはいっても、お二人の患者さんへの治療は変わってきます。Aさんに対しては、ピロリ菌除菌は抗生剤アレルギーへの不安から行いにくいでしょう。ですから、胃酸分泌抑制剤を内服すると同時に、如何にしてストレスを解消していくかを共に考えていく必要があると思います。一方、Bさんは治療よりもまず先に精密検査(生検など)をして胃がんがないかどうかを、はっきりさせる必要があるでしょう。

このように身体的状況に対する医学的な診断・治療に加えて、病気を持つ患者さん一人ひとりが抱えている精神的、社会的な諸事情も含めて全人的に考えた上で、患者さんと共に納得のいく治療法をオーダーメイド的に作りあげていきます。
例3家族背景(社会的側面)も含めた
全人的診療
Aさんはある日、風邪をひかれ、たまたま診療所を受診されました。その数年後にはAさんのご家族も来院されるようになり、その後にはAさんのご自宅へご両親の往診にもお伺いするようになります。
このように、最初に風邪のとき、ちょっとお立ち寄りいただく関係だったものが、何年か後にはご家族も来院されていたり、ご自宅へ両親の往診にお伺いするようになったということもしばしばです。

最初に治療した方のご家族に何か健康問題があれば、お子さんからお年寄りまで、様々な形で関わり、お手伝いさせていただくことがあります。さらには介護や子育てによる体調の変化、うつなどの心の病についてもフォローさせていただき、一人ひとりの個々の問題だけでなく、家族全体としてトータルにケアすることもあります。そうすることで長期的・総合的に、予防から治療、さらには緩和ケアや心のケアに至るまで幅広く、信頼関係に基づいたお付き合いができる、それも家庭医の利点です。もちろんご希望されない方にご家族の事情まで詮索することはございません。あくまでもご希望に応じ、必要に応じて対応可能であり、これが家庭医の基本的姿勢ですので、どうぞご安心ください。
例4重複診療、医療費高騰、
たらいまわしの改善に貢献
Cさん(29歳、女性)は、1ヶ月前から鈍いみぞおちから右上腹部あたりの痛みを自覚していました。熱は特にありません。お腹の痛みにもかかわらず、食事は普段通りにとれていました。しかし症状は一向に良くならないため、駅前にある「内科、循環器科」のクリニックを受診。

みぞおちの痛みであることから、念のため心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患(心臓)の鑑別のために心電図をとりましたが、異常は見られませんでした。血液検査も異常なく、胃炎や胃潰瘍の可能性もあるので、胃薬を処方され、症状がよくなるかどうか1週間様子を見てみましょうと言われます。

しかし、症状は全く改善せず、1週間後に今度は近所の「内科・消化器科」のクリニックを受診。再び血液検査と、今回は腹部エコーも行いました。しかし胆石、膵炎、肝炎などもみられず、前医の内服薬をもう1週間続けてみて、改善しなければ、1週間後に当院で胃カメラをしましょうといわれ、帰宅。

しかし、やはり症状は改善せず、1週間後に胃カメラをうけますが、明らかな異常はなく、とりあえずしばらくは今の内服薬(胃酸分泌抑制剤)を続けてみましょうと言われました。

その後Cさんは内服し続けますが、一向にみぞおち~右上腹部あたりの痛みは改善しませんでした。途方に暮れたCさんは、他科も受診してみようと思い立ち、今度は外科を受診。

再度血液検査、腹部レントゲンと腹部CTを行いますが、異常なしと言われます。最後に、ダメもとと半ば諦めつつ、バスで30分離れた婦人科を受診しました。問診で帯下(おりもの)の量はどうですか?と初めて聞かれ、そういえば帯下(おりもの)の量が最近多く、また臭いも強いことを思い出しました。そして内診台で診察を受け、子宮頚部(子宮の出口)が赤くやや腫れていること、右上腹部(特に右肝臓の表面)に特に痛みを自覚していることから、性行為感染症(クラミジア)が疑われ、抗生剤の投与で治療を開始。症状は数日間で劇的に改善しました。
このようにみぞおち当たりの痛みといっても様々な原因(疾患)が挙げられます。Cさんは最初、自分で、原因は内科ではないだろうか・・・と判断しました。その後、外科でもなく、最終的には婦人科領域の疾患(クラミジア)が原因と判明しました。

Cさんを最初に家庭医が診察していたら、このように各医院を渡り歩くことはなく、重複検査も無かったかもしれませんね。

家庭医は、探偵・刑事でいえば、「シャーロック・ホームズ」や「金田一耕助」のような立場といえます。それは正に「犯人は誰だ?」みたいな犯人探し、事件のシナリオ解きだからです。一方、専門医は診断のすでに分かっている患者さんに対し、非常に高度な専門治療に特化・集中して行うことが得意といえます。

それは家庭医の方が上であるとか、専門医の方が優秀であるとかを言っているわけではなく、それぞれの役割(働き)が違うのだといえます。

専門医の先生方には、専門分野の診療に専念していただき、そうすることで日本の専門医療のレベルも向上していきます。家庭医は専門医と連携しつつ、外来受診の原因となる疾患の大半(80~90%)を皆さんのより身近で診ていきます。
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